Oberlin life 〜アメリカ大学留学記〜

アメリカ、オハイオ州にあるオーバリン大学の1年生です。人口8000人の小さな街での大学生活について綴っています。

リベラルってどういうこと?

この記事は、私の個人的主観も沢山入っているので必ずしも全てが正しいとは思いませんが出来るだけ中立な立場から書きたいと思います。

 

オーバリンはよく世間でリベラルな大学、と称されます。私も一学期過ごしたいま、オーバリンってどんな大学?と聞かれるとつい一言でリベラルって答えたくなります。でもそのリベラルって一体どういうことなのか、ちょっと突っ込んで考えてみたいと思います。

 

リベラルとよく対比して使われる言葉がconservative、保守的です。政治でもリベラルと保守派、左翼と右翼、と分けられることが多いと思います。アメリカだと民主党がリベラル、共和党が保守派とよく言われると思います。(ネットでこんな記事を見つけました)

 

でもリベラルって?保守って?と聞かれるとなかなか答えるのが難しい気がします。

 

一晩考えた私が出した結論は、

  • リベラルは最近数年で出てきた考えのこと。人々の違いを大事にしている。
  • 保守は過去一世紀ほど社会で普通と捉えられてきた考え方を大事にしている。

なのかなと思っています。もちろん、もっと色んな要素が絡んではいるのですが、最近思ったのが、リベラルと保守の違いは、その考え方が社会でどのくらいの期間、どのように受け止められてきたかなのかなと思います。

 

例えば同性婚、LGBTQを認めよう!とする人たちは一般にリベラルと呼ばれ、反対する人たちは保守的と言われることが多いです。どちらが良いかはその人の価値観ですが、この場合、そもそも昔は社会的におかしい、と言われていた人たちを認めようとするのがリベラル、おかしいものはおかしいというのが保守派、なのかなと思いました。だから今はリベラルな考え方と言われていることも、数十年後には古い、保守的、と言われ、新しい考え方が出てきていてもおかしくないのではないかなと個人的には思います。

 

なので、私個人の意見としては、同性婚賛成や銃器反対だからリベラル、同性婚反対、人種差別だから保守的、とコンセプトにラベリングするのではなく、何年も社会で受け入れられて来た考え方に固執するのが保守的、近年出て来た考え方を支持するのがリベラルなのかなと思いました。

 

このリベラル、保守、を考えていく中で、大事な用語があります。公平と平等、EquityとEqualityです。日本ではこの二つの言葉、あまり違いを意識しないかもしれませんが、これ、大きく違います。

 

Equity、日本語では公平、は各個人の能力、スキルに合わせてサポート体制が整えられた上でみんな同じように、という考え方です。日本の小学校で例えて言うなら、生徒の身長に合わせて違うサイズの机や椅子を用意する、とか、視力の悪い生徒、背が低くて後ろからでは黒板が見えない生徒(これ私です)を前の席にする、等のことが当てはまるかなと思います。みんなが一緒に授業を受けられるように、スタートラインを一緒にしようと言うことですね。これがEquityです。リベラル派、と言われる人たちはこのEquityを重視する人が多い気がします。

 

それに対してEquality、日本語では平等、は各個人の能力やスキルとは関係なくみんな同じように、と言う考え方です。また日本の小学校に例えると、2018年4月2日から2019年4月1日の間に6歳になる子はみんな一斉にこの春、小学校に入学します。このグループ内の運動能力も学習能力もバラバラですが、みんな一斉に4月に入学し、ひらがなと足し算から、同じ学習指導要領と文部省検定教科書に沿って勉強していきます。これがEqualityです。なんとなく昔ながらな考え方と思った方もいるでしょう。なんとなく、こっちの方が保守的と言われがちかもしれません。

 

なぜこの二つのコンセプトを紹介したか、と言うと、リベラルと言われるオーバリンの生徒の考え方を説明するのに、これがすごく役立つからです。読んでいて想像がついた方もいるかもしれませんが、オーバリンの多くの学生が重視するのはEquity、公平です。しかも、極端なEquity重視の学生が沢山います。これがオーバリンのリベラルと言われる一つの所以なのかなと個人的には思っています。

 

具体的例を挙げるとするなら、まずAccommodationと言うのがあります。オーバリンでは、Center for Student Successというオフィスが、学生みんなが名前の通り、大学で成功するようサポートをしています。授業やテストを受けるのに、みんなと同じようにすると結果に支障が出ると認められれば、規定より長いテスト時間や静かなスペース等が与えられます。ただこれ、何か診断が出ている人だけではなく、そこのオフィスと話せば誰でももらえるんですね。Equity重視の多くのオーバリンの学生はこのシステムを非常に支持しますが、みんな一緒に、という教育に浸って来た留学生の多くはこれに疑問を感じます。実際にこういったサポートシステムに頼って最大限の努力をしていない学生もいる、という意見もあります。もちろん、成功するために必要なサポートが受けられるのは素晴らしいことですが、何事もグレーラインというか、限度はあるものかなと思います。

 

もう一つ例を挙げるなら、Safe spaceというコンセプトがあります。これは、人種や性別等の理由で居心地の悪い人が出ないように、マイノリティーの人が安全と思える場所を確保しようということです。そのために女子寮があったり、アイデンティティに基づいた寮があったりします。でも、これもまた問題もあります。いわゆるマイノリティーと言われる人たちが、逆に自分たちの権利を主張して排他的なグループを作り、逆人種差別という言葉まで出てきています。逆人種差別に関しては存在すると言う人としないと言う人がいて、ここでは追求はしません。ただ、そういった取り組みがあると言うことだけ記しておきたいと思います。

 

この記事を通して伝えたかったのは、リベラルと一言で言っても、様々な要素が絡んでいるということです。アメリカでもかなりリベラルと言われるオーバリンで約6ヶ月過ごし、驚くこともありました。でも、全てを引っくるめて思うのは、自分の意見をはっきりと持っている人たちや、全ての人にとって居心地のよい環境を作ろうと頑張る人たちの中でたくさんの刺激を受けているなということです。それに、リベラルと一言で言っても、みんな意見が同じわけではなく、はっきりとリベラル対保守というように分けるのは難しいです。そんな中でいま私にできるのは、常にアンテナを張って周りの意見を聞き、考え続けることなのかなと思います。そして、自分のポジションというか、立ち位置を確立していければと思っています。